



ジュヌヴィエーヴ・カストレイ(Geneviève Castrée)によるグラフィックノベル。困難な幼少時代を独特のイラストレーションで表現したサバイバルの記録。読んだ後、抱きしめたくなる1冊です。
A4よりひとまわり大きいサイズ。表紙はコートがかかっておらず、原本(カナダ・フランス語版)の味わいと似たやさしい手触り。本文の文字もすべて手描き。ジュヌヴィエーヴの繊細でキュートなフランス語の筆記体を思わせます。
翻訳:村上史子
あとがき:福田教雄 (スウィート・ドリームス・プレス)
言語:日本語
サイズ:230mm ×305mm
ハードカバー 本文-白黒80ページ
発行:プレスポップ
発売:2016年8月27日
ー以下、版元サイトより
プロフィール:
ジュヌヴィエーヴ・カストレイ(コミック作家、音楽家)
1981年カナダ生まれ。これまで多数の本を出版し、レコードを出している。ここ数年では世界中を旅している。切手を集めるのが趣味。現在、男性、小さな女の子、そして猫と共にワシントン州在住。(壮絶な闘病生活の末2016年7月9日死去)
主人公は80年代、90年代を若いシングルマザーの母とカナダ・ケベックで過ごす空想家の少女、ゴーグル。共に暮らす義父は彼女に無関心で、実の父は遠方に住みほとんど会うことがない。そんなつらい日々の中、彼女を救ったのは絵を描くこと、パンク・ロックを聴くこと、そして「いつの日か自立してみせる」という強い気持ちだった。だが、同時にその悪質な家庭環境は幼いゴーグルに確実に影響を及ぼし彼女のアイデンティティの一部となっていた。
ジュヌヴィエーヴ・カストレイのグラフィック・ノベルでのデビュー作である「少女ゴーグル」(原題:SUSCEPTIBLE)は、作者の豊かな表現力で感受性豊かな少女の思春期、家族、そして別れなどが繊細に描かれており、心に深く残る痛烈な作品だ。実際にストーリーはカストレイの生い立ちを基に書かれており、この作品には彼女の内に秘めてきた思いや語られることのなかった秘話が込められている。どうしようもない大人の中で、子供が自ら一番大人にならなければいけなかった「無垢の喪失」の物語である。
ジュヌヴィエーヴは、コミック、ヴィジュアル・アート、音楽の分野で長く愛され続けているアーティスト。彼女が生み出す作品には静けさ、穏やかさ、絶望といった表現の中に独特の感性がある。カストレイの細部にまで行き届く鋭い視点と苦労に満ちた過去を深く掘り下げる大胆な思考が「少女ゴーグル」を感動的な作品へと導いている。
人の心を打つ正直さで、カストレイはある少女のむごたらしいまでに混乱した子供時代の転換期を見事に蘇らせている。それはその少女を一生悩ませるような経験だったはずだ。最後のページを読んだ私は、本を閉じ、そのシンプルかつ完璧な結末を思って少し泣いた。
-ミランダ・ジュライ『一番ここに似合う人』著者
家族、そしてその悲しみを描いた表現が読む者の心を深く揺さぶり、丁寧な画力と物語る力が1つ1つの断片を繋ぎ昇華させる。
-オースティン・クロニクル紙