ソウルを拠点に活動する韓国人写真家、イ·チョン (Lee Cheong)の初の写真集。写真が並ぶだけでなく、特色のゴールドをもって部分的に意図的なデザインがなされています。
報道写真家としての経歴をもつ彼の目線は、名もなき人々の一瞬だけでなく背後にある時間までもとらえようとしているように感じます。
鳩も人も、望んでだわけでもない生を生きるものたちへ、現実を直視する鋭さと、すぎゆく時間の深みを感じる独特の空気をまとった一冊です。
以下,作家による紹介文を参考にした説明文。(意訳)
『硝子の瞳』は、都市に生きる存在の、壊れやすさ、匿名性、そして耐える姿を写しとった作品集です。
撮影を始めたきっかけは、息絶えた鳩の濁った眼でした。その虚ろなまなざしと、選んで生まれてきたわけではないその生を、すり減らしながらも歩み続ける人々の姿が重なりました。
本書では、人間も動物も物体も並列にストーリー性を剥ぎ取られ、まるで空気のない部屋に閉じ込められたよう表現され、都市に漂う孤独と隔絶が静かに滲み出ています。
ページの随所には、金色の特色インクが残像のように光を放ち、ダストジャケットは広げると両面のポスターに。表紙と裏表紙は、網点で刷られた人間と鳩の写真が対にデザインされています。覆い隠すことと、露わにすること。この両者ののあわいを強調した構造になっています。
『硝子の瞳』は、鳩の凍りついた眼差しと人間の空ろな視線を重ね合わせ、都市に生きる存在の儚さと持続を映し出します。
解答を示すことなく、ただその緊張をページに留め、硝子のように冷たく、脆く、反射するまなざしとして残した、写真家の初めての作品集です。
184mm×246mm
368pages
500部限定